★「野外手帳」、「カムイの食卓」 白土三平 著

 

 今回は「忍者武芸帳」、「カムイ伝」などの忍者漫画家 白土三平ではなく、先生のもう一つのライフワーク「自然を相手にした白土流民俗学」といっても過言ではない「野外手帳」と「カムイの食卓」をご紹介します。

 

 先生は千葉の房総半島の漁村に住み、農業、漁業というよりも狩猟民族のように、まさに自然の恵みを採取し半自給自足の生活を実践しています。

 

半自給自足の食生活の記録をまとめたのが「白土三平野外手帳」であり、「白土三平の好奇心1 『カムイの食卓』」です。

 

●「白土三平 野外手帳(写真)」

 

 この本には自然と食への畏敬の念がこめられており、非常に質の高い野外生活用の指南書であり知的好奇心を満たす民俗学の本と言っても過言ではありません。

 

 いろんな海の幸・山の幸の美味しい食べ方を紹介しながら、現代日本人が忘れ去った、ほとんど知らなかったその土地土地の食文化や風習を知る事ができます。

 

岩にこびりついた貝、きのこ、小魚の類~ポッポなます、カニコ汁など、海と山の美味しいもの~山海の珍味(?)の採り方・調理法・食べ方が写真入りで詳細に書かれています。

 

「饅頭でもいたんでいれば中毒をおこすし、公害食品も知らないで食べているのである。散布した農薬に汚染されたシメジを食べて倒れた例もある。まして有毒とわかっていてたばこを吸い続けている我々である。 フグだけにいわれのない憎しみと恐怖心をいだくのは自然を愛する心に反するものである。自然は風景として眺めるものでなくじかにふれ、他のものの存在を確かめ、そこから学び、己の正体を知るものである」(本文「フグ」より)

 

その土地土地の食文化・風習を通して、自然を守り慈しむ生き方や、自然の中で自然を利用して生きてきた先人達の知識を知る事ができます。

 

「カムイの食卓(写真)」

 

 房総の小さな漁村に住みつき実践してきた、半自給自足食生活の記録。

好奇心のおもむくまま胃袋に収めてきた山海の珍味の数々。

 

「エ~ッ!こんなモノまで食べられるの?!」

 

美食ブームの中でいつの間にか忘れ去られた食文化を写真入りエッセイで紹介しています。

 

 両方とも身近にあるものを自分で手に入れ、自分で調理して食べた経験を語っていますが、単なるアウトドアーやC級グルメの手引き書なんかではありません。

 

時には、昔ながらの食文化が失われていくことを嘆き、時には、疎開時の餓えていた少年時代の思い出など、先生自身の経験や考え方も記述されています。

 

でも、忍者ものを書かれているだけあり,いざというときには非常に役にたつこと間違いなしの本でもあります。

 

本当に面白いですよ~!

 

《 白土三平 略歴 》

     1932年 東京生まれ

     漫画家

     紙芝居の原画を描いていたが、紙芝居の衰退により漫画家に転進。

     1957年、貸本漫画『こがらし剣士』でデビュー。

     1963年、『シートン動物記』『サスケ』で第4回講談社児童まんが賞受賞。

     『風の石丸』が「風のフジ丸」のタイトルでテレビアニメ化。

     1966年、『ワタリ』が「大忍術映画ワタリ」として東映で実写映画化。

     1968年、『サスケ』がTBS系でテレビアニメ化。

     1969年、『カムイ外伝』が「忍風カムイ外伝」のタイトルでアニメ化。

     代表作は「忍者武芸帳」「カムイ伝」「サスケ」等多数

 

 

 

 

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