★ 「当世病気道楽」 別役 実 著
別役実といえば、サミュエル・ベケットの影響を受け、日本の不条理演劇を確立した第一人者。
でも、今回は不条理の世界ではなく、別役実のもう一つの顔~生物学の常識を覆す奇書のふりをしたジョークエッセイ「~づくし」作品群から「当世病気道楽」の紹介です。
この本、とにかく面白いんです。
報復絶倒間違いなし!!
病気を趣味にしてポジティブな人生を送ろうという本なんです。
別役実先生曰く・・・「趣味の中でも病気を趣味にすることこそ究極の愉しみといえるだろう。病気を敵視し、憎み、戦うばかりでなく、冷静に観察し、究極には病気を愉しむ。ヒトの進化はここまで来たのだ!!水虫も腹痛も脱毛症もガンだって愉しめる!?」。
別役流病気を趣味にする方法・・・・それが別役実の「当世病気道楽」です。
この本の中で取り上げられている病気は、風邪、腹痛、花粉症、歯痛、水虫、梅毒、不眠症、しゃっくり、すり傷、寡黙症、馬鹿など35種。
例えば、「序」と「最後」に登場する痔(食事中の方には失礼!)
痔で、人生に絶望してい友人。・・その痔が、彼の人生に活気をもたらし、「生きていること」に根拠を与えたのだ・・・・・。「痔持ち」が「三時だよ」と答えてきたら、その「痔持ち」はかなりのものと見なしていい。更に「三時三二分だよ」と分まで細かく言ってきたら、それはもう超のつくベテランである。・・・
例えば、「疝気」・・過日、ジュネーブの国際医療保険機関が調査したところによると、人間は「痛み」をこらえて七転八倒している時、最も「退屈」しない。(略)同機関は「視床痛」に苦しむ患者28名、「尿路痛」に苦しむ患者53名を任意に抽出し、特にその「痛み」の激しいときをねらって、「あなたは今、退屈していますか」と質問したところ、81名全員から「いいえ」という回答を得たのである・・・・・・。
とにかく一読あれ。
病気が本当に楽しくなりますよ!!
● 別役 実 略歴
1937年(昭和12年)旧満州生まれ。
早稲田大学政経学部では、学生劇団「自由舞台」に参加。
カフカ、ベケットらの影響を受け、62年被爆者の姿を不条理劇風に描いた戯曲「象」で注目を集めた。
1966年 鈴木忠志らと劇団早稲田小劇場を結成
1967年「マッチ売りの少女」と「赤い鳥の居る風景」で第13回岸田戯曲賞を受賞。
1970年「不思議の国のアリス」「街と飛行船」他の脚本で紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。
1984年「不思議の国のアリスの帽子屋さんのお茶の会」で児童福祉文学賞、斎田喬賞、東京都優秀児童演劇選定優秀賞を受賞。
1987年「ジョバンニの父への旅」「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」で芸術選奨文部大臣賞、読売文学賞受賞。
1997年、平成9年度兵庫県文化賞、98年には毎日芸術賞特別賞を受賞
2003年4月より2009年3月まで兵庫県立ピッコロ劇団代表をつとめる
その他、生物学の常識を覆す奇書のふりをしたジョークエッセイ『虫づくし』、日本古来および現代の妖怪の生態を解説した『もののけづくし』や『鳥づくし』『魚づくし』など「~づくし」シリーズは、ナンセンス作家としての著者を一躍有名にした。
また衝撃的な事件の闇に包まれたメカニズムを鋭敏な目で分析した犯罪エッセイ「犯罪症候群」などの独創的な論考も発表。