イヤ~、このような時代小説は初めてかも・・・。
でも、とても面白い本です。
定年まで銀座に通っていたけど、東京の原点~江戸の始まりを考えたことなかった。
改めて、家康と言う人物は凄い男だと思いました。
と言うのも、この小説のテーマは、家康が江戸幕府を開くまでに行った大規模なインフラ整備なのです。
教科書的な知識だけど、北条氏降伏後、家康は秀吉の命令により駿河国・遠江国・三河国・甲斐国・信濃国の5ヶ国を召し上げられ、北条氏の旧領である武蔵国・伊豆国・相模国・上野国・上総国・下総国・下野国の一部・常陸国の一部の関八州に移封されたのが天正18年(1590年)。
秀吉没後、1600年「関ケ原の戦い」で石田三成らに勝利し、慶長8 年/1603年に家康は征夷大将軍に任じられ江戸に幕府を開く。
関東に移封されて以来、400年以上と言う長い年月時間をかけ、現在のような政治・経済・文化等を世界に発信する巨大都市~東京が出来上がったのは、ひとえに家康の都市設計(インフラ整備)のお陰。
家康は、ある程度発展していた小田原に幕府を開かず、敢えて未開発の江戸に本拠を定め、市井の職人を起用し、どうやって現在の東京につながる街づくりの基盤を作り上げたかを描いたスケールの大きな小説。
とても面白いです。
そして、ここに登場する市井の職人たち~家康の命を受け活躍する職人達とても魅力的なのです。
当時の江戸は、海と利根川等多くの河川により水浸しで低湿地ばかりが広がる関東平野。
この低湿地帯を現在のように人間が住めるような街にすべく頑張った伊奈忠次と父の遺志を継ぎその治水工事を推し進めた熊蔵・忠治兄弟、忠治の息子忠克。
江戸が経済発展の中心になるように慶長小判を鋳造させた家康の意図。
その意図を組み奮闘する橋本庄三郎と太閤の貨幣鋳造役・後藤長乗の戦い。
江戸に住む人間が生きるために必要な「水」を確保するために奔走し、赤坂の「溜池」や「神田明神」の名水を発見した大久保藤五郎や今の「井の頭」から江戸に水を引いた六次郎等々。
江戸城構築のための基盤となる石垣を確保するために命を張った伊豆の石切りの親方吾平達と江戸の石積みの親方喜三太。
これまでの天守閣の壁の色は「黒」が常識だったが、家康は何故に「白」に拘ったのか?
家康の命で漆喰造りの石灰石を探し回る江戸城の大工頭中井正清。
父家康から城築を引き継いだ2代目秀忠の苦悩等々。
江戸という街を作った無名の職人・技術者に光を当てた珍しい歴史小説です。
ピンチをチャンスに変えた家康とその命を受け専門分野で活躍するプロの職人達・・・・。泣けます。
でも、とても面白い本です。
お勧めします。
●門井 慶喜(著) 「家康、江戸を建てる」
出版社:祥伝社
値段:860円+消費税(文庫本)
第155回直木賞候補作
2019年1月1日~2日/NHK正月時代劇On Air
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