釣りが好きで、サラリーマン時代は毎週土曜日には釣り船に乗っていました。
東京湾で釣りをしていると、よく潜水艦をみかけます。
潜水艦を見ると、「なだしお事件」を思い出します。
「なだしお事件」の正式名は、「潜水艦なだしお遊漁船第一富士丸衝突事件」。
1988年(昭和63年)7月23日に海上自衛隊潜水艦と遊漁船が衝突した事件で遊漁船が沈没し、30名の釣り人が亡くなりました。
山崎豊子(著)「約束の海」は、この事件から始まります。
また、山崎女史は、以前より真珠湾攻撃時に「米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉となり、捕虜の身ながら一人だけ武器を使わない戦争をしていた人物~酒巻和男」という実在人物に強く興味をひかれたそうです。
そして、構想30年にして遺作となったのが「約束の海」。
海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。
「酒巻和男」を父に持つ若き乗組員・花巻朔太郎は、事件後マスコミの批判、遺族対応、海難審判……世間の猛烈な自衛隊批判に直面。
「海難事故」を通して、自衛隊の存在意義とは何か、戦争とは何か、平和とは何かと問いかける。
「国防の仕事に就いている人たちは、どこの国でも、国民に敬愛されこそすれ、こんなに嫌悪されているのは日本だけ」と悩むが、「国を護る、戦争を起こさない努力をする仕事」が自衛隊であると結論に至る。
捕虜第一号の父と自衛隊の存在意義に悩む主人公の若き乗組員・花巻朔太郎の二人は「ここで日本の海を二度と戦場にしてはならない」と約束。
時代に翻弄されながら、それぞれの時代に抗う父子二代・百年近くにもわたる壮大な物語。
ですが、残念ながら山崎女子は病に倒れ、第一部・第五章までを書き終えたところで逝去され、残念ながら未完となってしまいました。
「約束の海」は未完ですが、とても面白い小説でした。
最後に、山崎女史が「出筆にあたって」で次のような言葉を残しています。
「戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力を持ってはいけない、と言う考えには同調できません。
いろいろと勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、と言う存在を追及してみたくなりました。
・・・・自衛隊は反対だとかイエスかノーかで単純に割り切れなくなった時代です。
そこを読者の皆さんと一緒に考えて生きたいのです。
今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません。」
余談ですが、同本で潜水艦乗りの仕事、潜水艦の生活や、任務が結構細かく書いてあったのも面白い。
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