実に面白い本でした。
今の岐阜県にあたる西美濃から江戸城まで、12泊の参勤交代をつぶさに描いた時代小説なんです。
参勤交代は、時代劇映画の中でしか見たことがないのですが、何時も百姓・町民の土下座しか記憶に無くってね・・・・。
この本を読んで当時の参勤交代や道中の日々がどのようなものであったか、初めて分かりました。
「一路」とは、蒔坂 左京大夫(まいさか さきょうのだいぶ)西美濃田名部郡を領分とする7500石の旗本である小野寺 一路(おのでら いちろ)の名前。
とは言え、小野寺 一路は、江戸育ちの19歳。
彼は、父の不慮の死(屋敷の失火)により家督を相続し、蒔坂家の御供頭として江戸への参勤を差配することになる。
しかし、父親からお役について何も伝授を受けていない。
参勤交代に関して残っているのは、二百年以上前の家伝「行軍録」~現代風にいえば参勤交代マニュアル本~のみ。
この「行軍録」のみで、西美濃から江戸城までの参勤交代となるわけですが・・・・、江戸に着くまで失敗は許されない。
お役目を果たせなければ家禄召し上げという身で、江戸育ちで参勤交代の知識も経験もない若者がまさに命がけで本分を全うしようと突き進む姿から「人が守るべき訓えとはなにか?」、「貫くべき義とはなにか?」、はたまた「組織に生きる人間の心理、人を動かす力とは何か?」をも考えさせられます。
コメディ色も強いですが、ちゃんと感動させてくれる実に面白い本でした。
余談だけど、この本を読みながら「一路」と一緒に中山道を歩いている気分になっちゃってネ・・・、
学生時代に中仙道の妻籠・馬籠などを旅したのを思い出しちゃいました。
第3回「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞作
中公文庫:上下巻2冊 691円×2冊=1,382円
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