金曜日ぐらいから若干体調が悪く、連休に入ったとたんに咳き・喉の痛みでダウン。
参りました。
と言うことで、大岡昇平先生の「戦争小説集~靴の話」を読了。
大岡昇平先生は、1944年に教育召集で、東部第二部隊に入営し、フィリピン諸島のミンドロ島警備の暗号手としてサンホセに着任。
昭和20年の1月マラリヤでフラフラ状態の時に米軍の捕虜になり、レイテ島タクロバンの俘虜病院に収容され、同年の12月に帰国されたという戦争体験者です。
で、今回の「戦争小説集~靴の話」は、大岡先生の実体験に基づいた徴兵から出兵、勤務を経て米兵との邂逅、そして捕虜としての生活までを順に追った6つの短編集です。
どの短編も先生自身の戦争体験談ですが、これまでの戦争体験小説と一味違います。
普通の体験談のような事実やその感想だけに終始せず、先生が実際に戦場で体験した時の心の状態や取った行動を冷静に分析し克明に記している点です。
不測の事態が連続して起こる戦争の中で、「個人とは何か?」、「戦場における人間の可能性とは何か?」を徹底的に忠実に書き尽くそうとしているのが、異様なほどのリアルさを生んでいるように思えました。
とても面白い戦争小説です。
その他の先生のお薦め本。
●「俘虜記」 横光利一賞受賞。
前半が俘虜になる前、後半が俘虜となった後の生活を描いたもの。
「米兵を何故撃たなかったか」という命題を明晰な文体で省察。
また、収容所という「社会」を悲痛に、ユーモラスに描き、人間のエゴや堕落を洞察し、細かく分析し描写しています。
●「野火」 読売文学賞・小説賞受賞。
先生のフィリピンでの戦争体験を基に、死の直前における人間の極地を描いた戦争文学の代表作です。
1959年に市川崑監督、2015年に塚本晋也監督により映画化されています。
●「レイテ戦記」 毎日芸術賞受賞。
日本軍8万4千人、米軍1万5千人が犠牲となり太平洋戦争の“天王山”と呼ばれたレイテ島における死闘を、厖大な資料や多くのインタビューから再構築した戦記文学。
どれもとても面白い本です。
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