● むのたけじ 著 「日本で100年、生きてきて」
この本は、若い方に是非手にとってもらいたい本です。
大好きな「詞集たいまつ」の“むのたけじ”先生の新刊本。
ご存知のように“むのたけじ”先生は戦時中朝日新聞の特派員として戦場で取材。
1945年8月15日に「負け戦を勝ち戦のように書いてきた責任をとる」と退社し、故郷の秋田県横手市に戻り、社会の病巣をえぐる週刊新聞「たいまつ」を創刊。
この週刊新聞は、78年の780号で休刊するまで30年間続きました。
“むのたけじ”先生も今年1月2日に100歳を迎えたそうです。
本日著紹介する本は、「~戦で殺し合い、大勢の犠牲者をだすような馬鹿げた事の無い世の中にしたい」と願い、「人間は、支えあうのが本質。~差別を無くすことが私の残りの人生の中で訴えたいことの一つ」と言う100歳の現役記者の先生が、朝日新聞岩手版と秋田版で連載している「最思三考」の中から86編を編集し、これからを生きる人たちへの熱い思いをこめた伝言です。
「憲法9条」、「秘密保護法」、「はだしのゲン」、「戦争」、「原発」、「教育」等の問題を論じながら、先生の過去の実体験を踏まえ、100年にわたる人生の喜び、生きる上で大切なことは何かを平易な文章で語っています。
「老いは醜くなることではなく、経験を積んで輝くこと。まだ生きる意味がある」とし、「100歳だけど、まだまだ死ねない。130歳まで生きて、どれだけ戦争がひどいものかという実態を語り伝えなければいかんと真剣に思っている」先生の素晴らしい姿勢を感じ取ってください!!
●珠玉の言葉が満載本 「日本で100年、生きてきて」より
・「自由とは規制がないこと。~但し、責任は伴う」
・「人間は(自分と)同じじゃないことを認め合うことで本当に愛し合い、認めることができる」
・「匿名~名乗ることで自分に対するマイナス現象が起こりうるから匿名にする。~匿名でないと生きられない社会は、偽デモクラシーだ。~もっともっと人間が素肌で触れ合って付き合えるような社会にするために、まず自らが何をするにも実名で動かなければいかん」
・「自分を粗末にする人は、他人も粗末にする。~自分に責任を持つ人は他人に対しても責任を持つ」
・「国会を取り巻く金曜デモは、(アラブの春同様)皆が目の前に起きたことを皆の問題としとらえ、皆で解決しようと動いたことだ。~無名の“力”が発揮される時代になった」
・「自分を励まして自分を元気付けるものは自分でしかない」
・「今はグローバリゼーション等と言って、地球単位でものを見る傾向にある。遠方を見るだけでなく、振り出しに戻って自分の足元を見つめ直す・掘り起こすことからスタートしてもいいのでは・・・」
・「福島原発は~戦争と同じ“人災”なんだ」
・「生きていれば、何か経験する。~1日生きることは1日新しい経験をする」 等々・・・。
・「人間は何のために生まれてなんのためにいきているかー「喜ぶため、楽しむため」
朝日新書 842円
● 伊東潤 著 「戦国鬼譚 惨」
時代小説というのは、自分が知っている歴史上の人物が主人公になっている小説が一番面白く読めますよね!
今回ご紹介する本は、甲斐の戦国大名・武田家が信長の侵攻を迎えて瓦解していく過程を描いた短編集。
武田家といえば、一番有名なのが武田信玄だよね。
「風林火山」の軍旗と上杉謙信(長尾景虎)との「川中島の戦い」で有名な戦国武将。
「オ~ッ、武田信玄を扱った小説か!」と言うことで、読み始めたら・・・・・、何と武田信玄死後の物語・・・・。
知っている登場人物は、かろうじて信玄の父親である武田信虎のみで・・・・、後は・・・恥ずかしながら名前も聞いたことが無い武将ばかり・・・・。
「参ったな~・・・」と思いながらも、お世話になっている伊東先生の本。
覚悟を決めて読み始めたら・・・、いつの間にか夢中になってしまい読了。
武田家のカリスマ 信玄の死後、織田信長の侵攻に際し木曽義昌、下條頼安、武田逍遙軒、仁科盛信、穴山梅雪が「生き残り」をかけてありとあらゆる手を尽くしていく。
「武田に殉じるか織田へ寝返るか」・・・、親・兄弟で騙し合い裏切り裏切られ、抗いきれぬ運命に弄ばれていく彼らの懊悩が怒涛のように展開していく。
つくづく作家と言うのは凄いと思います。
登場人物のほとんどが知らない人物ばかりなのに、ここまで読者を夢中にさせるのは、史料や文献に顕れない登場人物の心理や行動を補う作者の想像力・推察力・構成力によるものだと思います。
さすが、32回吉川英治文学新人賞候補に選ばれた小説。
本当に面白い、傑作小説ですよ!!
しかし、武田信玄が遺言で「自分の死後は警戒しろ」と言った武田信虎の描写が凄い!
登場する武田信虎は80歳を過ぎているのですが、旺盛な野心と毒気は圧巻!!
講談社文庫 700円
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