池波 正太郎は、知ってますよね・・・。
そう・・・、戦後を代表する時代小説・歴史小説作家。
代表作は、「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」「真田太平記」などの戦国・江戸時代を舞台にした時代小説。
美食家・映画評論家としても有名だよね。
でも「青春忘れもの」は、時代小説・歴史小説ではありません。
ましてやグルメ本でも映画評論でもありません。
「青春忘れもの」は、池波正太郎の自伝的小説なんです。
大正時代に生まれで戦前、戦中、戦後と激動の時代に濃密な青春を送った池波正太郎の原点を知ることができる作品です。
関東大震災の年に生まれ池波正太郎は、小学校卒業後すぐ株式仲買店の店員に就職。
その後も勤め先を転々としつつも芝居見物を楽しみ、美食を覚え、吉原にも通う早熟な十代を過ごしています。
戦時中は旋盤工として働き、やがて海兵団に入団。
復員後は、役所に勤める傍ら脚本家への道を歩み始め、その後、長谷川伸(注)のもとで小説家をめざします。
小学校卒業後すぐに社会に出た正太郎少年が、いかにして小説家としての地位を確立するにいたったのか、その人間形成の道筋がつぶさにわかる作品です。
また、戦前の東京の雰囲気が具体的に描写されているので、風俗資料としての価値も十分にあるとおもいます。
「青春忘れもの」、とても面白いですよ!
「青春忘れもの」:新潮文庫/515円
(注)長谷川 伸(はせがわ しん)
1884年(明治17年)3月15日 - 1963年(昭和38年)6月11日
「股旅物」というジャンルを開発し、劇作家として次々とヒット作を世に送り出す。
昭和2年に江戸川乱歩、土師清二、小酒井不木、国枝史郎らと耽綺社を設立。
昭和8年に大衆文芸や演劇の向上を目的とした「二十六日会」を結成。
また主宰していた文学学校(勉強会)「新鷹会」の門下生には、村上元三、山手樹一郎、山岡荘八、戸川幸夫、平岩弓枝、池波正太郎、西村京太郎などがいる。
代表作品:「中山七里」、「関の弥太っぺ」、「瞼の母」、「切られ与三郎」、「沓掛時次郎」等多数。
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