久しぶりの野坂作品。
彼の作品を読んだことが無い方でも「火垂るの墓」は知ってますよね。
アニメ映画にもなりましたからね!
で、「終末の思想」・・・・、昔と変わらずダラダラと切れ目なく書いているけど、結構面白く読めました。
「経済が少し上向けば、万事好調を装う日本社会。
戦後、食と農を疎かにし、物を崇め、唯一の被爆国でありながら原子力エネルギーに突っ走り・・・・、負の部分を見ず、すべてのツケを先送りして来たため、将来には当然報いが待ち受けている。
右へ進もうが、左に行こうが、日本のお先は真っ暗闇で、希望や救いはどこにもない。
ならば、いかに滅ぶべきか、死ぬべきか・・・・。
日本はもう一度焼け野原になるしかない!
敗戦の焼け野原から、戦後日本を見続けてきた作家が、自らの世代の責任を込めて、この国が自滅の道を行き尽くすしかない・・・・・。」と言うような内容。
学生時代、彼の作品に嵌っちゃってね・・・。
野坂作品の根底には、彼自身が体験した戦争があります。
神戸大空襲、敗戦直後の占領軍、闇市・・・・。
孤児から浮浪者となって少年院に収容。
この少年院では十代の少年が骸骨のようになってバタバタ死んでいったという。
彼も餓死寸前に実の親に救出。
このような彼の体験のなかから、「火垂るの墓」等の面白い作品が生まれています。
野坂は、1963年に「エロ事師たち」で作家デビュー。
この作品は、法の網をかい潜り、世の男どもの「エロ」を満たすため、あらゆる享楽の手管を提供することを使命とする「エロ事師」を生業とする男の物語。
独特の文体で文学的にも三島由紀夫や吉行淳之介等に高い評価を受けています。
1967年に「火垂るの墓/アメリカひじき」で直木賞受賞。
その他にも、面白い小説やエッセイが一杯ありますよ。
若干紹介しますね。
・「卑怯者の思想」
1969年に起こった全共闘運動の屈折と真情を、<心弱き逃亡者>的視点で描写した実験的エッセイ。
当時の学生から絶大な支持を受けた本。
・「骨餓身峠死人葛(ほねがみとおげほとけかずら)」
昭和初期、九州の葛炭坑を舞台に繰り広げられる妖しく光る異常な美の世界。
“うちゃ、もっと死人葛がほしいんよ、あげんうつくしか花はなかとよ…”死人を養分として美しい白い花を咲かせる死人葛。
その花に魅せられた少女と、彼女を取り巻く人々の愛欲とを淡々とした筆致で綴る表題作他。
・「騒動師たち」
1960年代末、「ケバラ」をはじめとする大阪・釜ケ崎の騒動師たちが地元で騒動を起こすだけでは飽き足らず、貨客船をのっとりアメリカ・サンフランシスコに上陸、シカゴ、ニューヨークを珍道中して帰国した後、東大安田講堂の攻防戦に乗り込み、「総共闘」に味方して機動隊相手に一大決戦を繰り広げる破天荒の長編小説。
・「てろてろ」
殺人こそ対話の究極と信じ〈心優しきテロリスト〉に変貌した自閉症三人組の支離滅裂な行動のなかに、現代文明や時代への批判をこめた痛快テロ小説。
・「終戦日記」を読む
焼跡闇市派の作家野坂昭如さんが、あの時代を生きた者として自らの体験と同時代を生きた大佛次郎、永井荷風、高見順ら知識人たちの日記から、彼らが東京大空襲、原爆投下、玉音放送などに対してどんな見識を持っていたかを探り、当時の大人たちが思考停止状態に陥り、「しようがなかった」で済ませようとしていた戦争を後世に伝える名著。
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