★ 「人間臨終図鑑」 山田風太郎 著
出版社: 徳間文庫 全3巻
まずはクイズの答え。
Q1はゲーテ、Q2は勝海舟、Q3はあの大盗賊 石川五右衛門でした。
「人間臨終図巻」(写真:初版本)は、古今東西の著名なる人々の多種多様な「最期の時~死に様」を、風太郎流に醒めたタッチで叙述した大作です。
「死」という主題を扱うと多かれ少なかれ感傷的になりがちですが、そこは風太郎・・・「人間死ねば終り」という山田風太郎の明快な姿勢が貫かれています。
登場する人物の数は、1683年(天和3年)15歳で火あぶりの刑に処された放火犯「八百屋お七」に始まり、1986年に121歳の長寿を全うした泉重千代まで総勢923人。
それを死亡時の年齢順それも若い順に記述しています。
取り上げられている人物の職業は、政治家、軍人、宗教家、文学者、音楽家、哲学者、芸能人、スポーツ選手、犯罪者と実に様々・・・・。
これだけの大人数のバラエティに富んだ「最期の時~死に様」だけを集めた本は、おそらく世界でも類を見ないのでは・・・・。
同書の本来の意図は、「先人の死を知ることで、よりよい生を生きられるように」ということだろうと思いますが、いろんな読み方ができます。
一つ、各人が生きた時代も国も生き方も全て関係無く、「何歳で死んだか」だけで並べられていりので、年齢順に読んでいくと“自分がこの人が死んだ歳までとりあえず生きてきたんだな~!”というにある種の感慨に耽ることができる。
一つ、各人の項目を読むことにより日本史や世界史の裏面史を知ることができる。
「あの作品はこの人が書いたのか」など、貴重な読書ガイドとなるし、誰の葬儀に行ったとか、病床を見舞ったなど、意外な交友関係がわかるので、人生・人名のデータベースとして様々な活用法ができます。
第1巻は、15歳から55歳で死んだ人。
15歳で火刑死した八百屋お七、次いで16歳では赤穂浪士の大石主税(忠臣蔵で有名な大石内蔵助の息子)や「アンネの日記」のアンネ・フランク、は次いで17歳で明智光秀による本能寺の変で死んだ信長の小姓 森蘭丸など。
第2巻は、56歳から72歳で死んだ人。
第3巻は73歳から百歳以上で死んだ人。
この年代は、さすがに病死や老衰など、いわゆる「老醜」をさらした人々が多いのですが、風太郎は冷徹に客観的に記述しています。
「死神は一切合財区別なく、巨大なシャヴェルですくいあげていく」(第2巻)。
「神は人間を、賢愚において不平等に生み、善悪において不公平に殺す」(第1巻)。
人生観が・・・・・・変わるかもね!
●赤瀬川原平 監修の「辞世のことば~生きかたの結晶」(発行元:講談社)も面白いですよ!