Alan Parsons Project
ロック史において最も有名なエンジニアのひとりでありミュージシャンでもあるAlan Parsons。
元々は、イギリス・アビイ・ロード・スタジオのエンジニアであり、BeatlesやWings、ピンク・フロイドなど数々の超有名アーティストのエンジニア、アレンジャー、プロデューサーを務め1960年代後半から70年代にかけて多くの傑作を世に送り出しています。
有名なところでは、Beatlesの「Let It Be」、Pink Floydの「Atom Heart Mother/邦題:原子心母」、「The Dark Side of the Moon/邦題:狂気」等。
その後、自らもミュージシャンとして作品を発表するようになり、1975年にAlan Parsons Projectを結成。
Alan Parsons Projectは、キーボード担当アラン・パーソンズとボーカル担当エリック・ウールフソンの2人が中心となり、他のメンバーは常にセッション・ミュージシャンを起用するプロジェクト形式の音楽集団。
元Pilotのデヴィッド・ペイトンとイアン・ベアンソンの2人は準レギュラーのような形で、ほぼすべての作品に携わっています。
作成したアルバムは、コンセプト・アルバムが主体で、アラン・パーソンズがこれまで培ってきた音楽センスを遺憾なく発揮。
「I In The Sky」(全米3位)、「Don’t Answer Me」(全米15位)、「Time」(全米15位)などが大ヒットし世界的に成功。
1987年までの活動期間中にアルバム10枚を発表。
まったくコンサート活動を行わないグループとしても有名です。
「Gaudi/邦題:ガウディ」発表後にグループは解散。
その後アランとエリックはそれぞれソロ活動を行っている。エリックはミュージカルや舞台音楽の世界に移った。
2009年12月2日、エリックが腎臓癌のため64歳で他界。
◆「Tales of Mystery and Imagination - Edgar Allan Poe/邦題:怪奇と幻想の物語〜エドガー・アラン・ポーの世界」
1976年発表のアラン・パーソンズとエリック・ウルフソン率いるAlan Parsons Projectの記念すべきデビュー1stアルバム。
プロジェクト結成する前、BeatlesやPink Floydなどの作品を手掛けていたエンジニアのアランが、エリックから「エドガー・アラン・ポーを題材にした作品を作らないか」という誘いを受けて、アルバムをつくる事になり出来上がったのが同1stアルバム。
タイトル通り幻想小説の大家エドガー・アラン・ポーの作品をテーマとした壮大な作品です。
かなりプログレ的な作りになっていますが、どの曲も流れるように展開でとても聴きやすいアルバムです。
アルバム作成には、Pilotのデヴィッド・ペイトンがBass、イアン・.ベアンソンがGuitarやJohn Miles(Vo)、ポップ・プログレのトリオ・バンドのAmbrosiaも参加しています。
ポーの作品世界を再現した同アルバムは、グラミー賞にもノミネートされるなど高い評価を得ました。
USAビルボード・アルバムチャートで56位、UKアルバムチャートで38位を記録。
◆「I Robot/邦題:アイ・ロボット」
1977年発表の2ndアルバム。
SF作家アイザック・アシモフの同名の短編小説をコンセプトにしたアルバム。
プログレッシブ・ロックの名盤にも入っています。
プロジェクトには、10ccやPilotの2名の他にCockney RebelのSteve Harley、HolliesのAllan Clarkも参加しています。
シングルカットされた「I Wouldn't Want to Be Like You/邦題:君は他人」77年9月24日に40位で初登場、次の週が37位、そして最高位36位。
アルバムもUKで9位、USAで30位を記録。
テーマはSFですが、普遍的な「愛情」や「やさしさ」というものを主題に置き、電子楽器の使用を最小限に押さえ暖かみのあるサウンドを生み出しています。
また、メロディの美しい曲が随所にちりばめられた好盤です。
特にAndrew Powellのオーケストレーションは秀免で喜びや悲しみ、不安といった心の機微を見事に表現しています。
◆「Pyramid/邦題:ピラミッド」
1978年発表の3rdアルバム。
今回のテーマは、ピラミッド。
Alan Parsons Projectの作品の中では比較的地味な作品ですが、APPが醸し出す雰囲気は最高です。
アルバムは、UK26位、USA49位を記録。
◆「Eve/邦題:イヴの肖像」
1979年発表の4thアルバム。
同アルバムは、これまでのプログレ色から抜けだし、ポップロック路線を大きく打ち出した実験的作品。
ポップな内容に反して、ジャケは右側の女性の顔のできものをベールでカモフラージュするといった、何とも不思議な印象を抱かせています。
このアルバムのプロジェクトの目玉は、何といっても女性VOの一人、クレア・トーリー。
この女性は、Pink Floyd「狂気」の「虚空のスキャット」でのヴォーカリスト。
思わず「The Dark Side of the Moon」が頭をよぎります。
オープニングを飾るインスト曲「ルシファー」は、大好きな曲の一つ。
シングルカットされた「沈黙Damned If I Do」も、前奏の長いアルバムバージョンです。
ラストの「願いIf I Could Change Your Mind」は、APPには珍しい女性ボーカルをフューチャーした隠れた名バラード。
アルバムは、UKで13位、USAで74位を記録。
◆「The Turn of a Friendly Card/邦題:運命の切り札」
1980年発表の5枚目のアルバム。
当時のアラン・パーソンズは、「評論家から絶賛されるような良質な音楽を作ってもヒットが出なければ意味がない」という信条を持っていたようです。
その信条を具体的な形としてシングルカットされた「Time」と第2弾シングル「ゲームズ・ピープル・プレイ」が大ヒット。
アルバムもUKで13位、USAで38位を記録。
プロジェクト参加メンバーは、アンドリュー・パウエル指揮のオーケストラ他、スチュワート・エリオット(dr)、イアン・バインソン(g)、ディヴィッシ・パートン(b)、クリス・レインボウ(vo) らお馴染みの面々の他にGodley & Cremeのクレジットも。
ポップなA面と聞き応えあるB面の構成が、音楽を聴く側にはとても満足する1枚です。
◆「Eye In The Sky/邦題:アイ・イン・ザ・スカイ」
1982年発表の6枚目のアルバム。
毎回、神秘的な題材をテーマに置き、コンセプト・アルバムを創り続けていたAlan Parsons Project。
今回は、宇宙を題材にしたアルバムです。
このアルバムのリリース当時は、プロモーション・ビデオが流行し始めた頃で、映像映えする音楽、何処を切ってもシングルカットできそうな、商業的なアルバムが売れていた時代でしたが、同アルバムはコンセプト・アルバムという形をとっていたため、シングルカットされたタイトル曲の「I In The Sky」はプロモーション・ヴィデオもありませんでした。
しかし、シングルカットされた「Eye In The Sky」はUSAビルボード・シングルチャートで3位の大ヒットに。
アルバムもUKで7位、USAで27位を記録。
根っからの職人集団Alan Parsons Projectは、不完全な演奏を嫌い、楽曲の性格によって、ヴォーカルを変えるばかりではなく、クラシック、ロック、ポップ、プログレッシブの要素を融合させていく。
同アルバムは、色々なテイストを持つ楽曲が収録されたコンセプトアルバムになっていますので、Alan Parsons Projectの懐の深さと職人技を満喫するのには最適です。
◆「Ammonia Avenue/邦題:アンモニア・アヴェニュー」
1984年の7枚目のアルバム。
このアルバムは、プログレを進化させたAlan Parsons Project独特のポップロックが満載
特に80年代ムーブメント真っ直中シングルカットされ、MTVでも話題になったフィル・スペクターサウンドの名曲「Don't Answer Me」の美しさは特筆です!!
USAビルボード・シングルチャートで15位を記録。
ウルフソンの優しいボーカルが聴いていると吸い込まれそうになるビューティフル・ロックの代名詞ですね。
また、クリス・レインボウがボーカルの「Since The Last Goodbye」も素晴らしい。
アルバムジャケはロボットみたいですが、横にするとパイプラインの鏡写しだとわかります。
裏ジャケの砂に顔を埋めた科学者たちも印象的でした。
優しいヴォーカルと、綺麗なメロディー・ラインがぎっしり詰まった、お気に入りの1枚です。
アルバムは、USAで24位、UKで17位を記録。
◆「Vulture Culture/邦題:ヴァルチャー・カルチャー」
1985年発表の8枚目のアルバム。
購入当初に聴いた時はサラッと聴き流してしまったのですが、何回か聴き返してみると「さすがだな~!アラン・パーッソンズは本当に音作りが上手いな!」と感じる1枚。
ポップな曲で構成されますが、一つ一つの音は精密かつ慎重に構成されています。
美しい曲「days are numbers」、ポップ曲「sooner or later」、綺麗で心温まる曲「separate lives」・・・・・・・。
ゆっくり聴きたい1枚です。
アルバムは、USAで40位、UKで46位を記録。
◆「Stereotomy/邦題:ステレオトミー」
1986年発表の9枚目のアルバム。
このアルバムは、初期のAPPにもどった実に硬派なロックアルバム。
「ステレオトミー」は、1stアルバムのコンセプトだったエドガー・アラン・ポーの作品からの引用で、正に原点回帰の作品です。
これまでのポップロック路線から大きく転換し、初期のプログレ的APPサウンドのもどり、とても魅力的な作品となっています。
特に「Urbania」、「Where's The Walrus?」という2つのインスト曲が大好き!
アルバムは、UKで43位 を記録。
◆「Gaudi/邦題:ガウディ」
1987年発表。
実質上「The Alan Parsons Project」の最後のアルバムとなります。
今回のアルバムも前作同様初期のようなプログレ色を打ち出した作品。
「ガウディ」は、文字どおりバルセロナの建築家アントニオ・ガウディをテーマにしています。
眼を閉じて聴けば、バルセロナに朗々と天を指すラ・サグラダ・ファミリアが心の奥底に浮かんでくる叙情性溢れる作品です。
作曲と建築は、非常に似ているものなのかもしれませんね。
一つ一つ緻密に設計されたアラン・パーソンズとエリック・ウルフソンの作品は、プロジェクトの面々をを取り込み、まさに大輪の華を咲かせる。
音楽をここまで描き切ることが出来るのはアラン・パーソンズならではないかと思います。
アルバムは、USAで66位、UKで57位を記録。